手染め糸の楽しみ 4

今回は、cowgirlblues・ kidsilk gradient (モヘア糸)の「Isn`t it ironic?」をベースに、種類の違う糸を引き揃えてみます。

1回目で玉に巻いたものです。覚えていらっしゃるでしょうか。

まず、kidsilkとの相性抜群の、BC Garn・Baby Alpacaと引き揃えてみます。
モヘアの色が引き立つようにBaby Alpacaの方は白(100・milk)にしました。

Baby Alpacaと引き揃えると、とろけるような手触りの編み地になります。色々なデザインに使いやすいDK (又は並太) 程度のゲージになり、プルオーバーにもカーディガンにもほど良い厚み。秋にも真冬にも春先にも着られる、しっかりした暖かさがありながらとても軽く嵩張りません。ウールとは違うとろみがあるので、ドレープ感を出したいデザインにも良く合います。

さらに嬉しいおまけポイントが。単品だと毛玉が出来やすく肘など擦れて薄くなりやすい、とても繊細なBaby Alpacaなのですが、kidsilkと引き揃えることで全くと言っていいほど毛玉レス、そして丈夫で長持ちするようになります!お手入れがとても楽なのです。

…と、前置きが長くなりましたが、編んでみるとこうなります。モヘア単品で編んだ時に比べて発色が柔らかくなり、背景に白を敷いたように色の美しさが引き立つようです。↓

次は、Baby Alpacaとの微妙な違いを確かめるため、同程度の細さのcowgirlblues・Merino Lace Shingleの単色糸、sableと引き揃えてみます。↓

この組み合わせは、同じcowgirlbluesの糸同士ということもあり、間違いなく相性の良い組み合わせ。引き揃えた時のゲージや厚みはBaby Alpacaの時とほぼ同じで、DKや並太程度の糸で編んだ編み地になります。Merino Lace Singleはウールなので、Baby Alpacaより気持ち張りのある編み地になりますが、モヘアの効果でやはりとろける手触りです。

今回は一番主張の少ない色のsableと合わせてみました。グレーとベージュの間のような色です。主張が少ないと言っても、そこは手染め糸。単体で編んでも微かな色の揺らぎがとても美しいのです。なので引き揃えるのはもったいないとも言えますが…実験なので贅沢に。

これも美しいですね! 白と合わせたときよりも落ち着きがあり、何色と言い難い、複雑な色合い。
飾りのないシンプルなセーターにしたくなります。

次もまた贅沢に、手染めのシルクウール、Manos del Uruguay・Finoと合わせてみます。こちらも糸の太さは同程度。色は、グレイッシュなピンクのHavishamです。ブルー系のTea LeavesやCristal Goblet、濃い色のPeacockなども気になりつつ、前回ピンク系の糸との引き揃えが可愛かったので、微妙なピンクの違いを比較するため、Havishamにしてみます。

やっぱりかわいいですね! ゲージは上の2つと同程度ですが、僅かに厚みが出て編み目がキリッとします。手触りは、これもまた、しっとりなめらかでとろけるようです。


この3つの編み地は本当によく似ているのですが、敢えて違いを言うなら、3つの中で一番ふにゃふにゃと柔らかいのがBaby Alpaca、膨らみがあるのがMerino Lace Single、中身が詰まっている感じがFinoです。どれも微差です。どれにするか迷う時には、色の好みで選んで間違いないと思います。

次に、もっと太い糸を合わせてみます。BC Garnの定番糸、Semillaの白(01・milk)です。

とってもいい感じ! 糸が太くなった分、奥の方からじわっと色が滲んでくるようで、雪景色のようなイメージが浮かびました。
極太程度の糸で編んだくらいのゲージと厚みになります。これでざっくりした厚手のセーターを編んで真冬に着たいな…と妄想が膨らみます。

ところでcowgirlbluesの多色染め糸、最近の色名は歌の名前シリーズのようなのです。今回ずっと使っている「Isn`t it ironic?」は、Alanis Morissette の「Ironic」にちなんだ名前のようなのですが、そのMVの色合いは、まさに雪景色を背景にいろんな色が現れては消えという物。と思うと、この引き揃えはカセの状態よりも単体で編んだ時よりも、MVのイメージに近いのかも知れません。

※気になる方はこちらから…
https://www.youtube.com/watch?v=Jne9t8sHpUc

最後に、一番気になりながら、ためらいを感じていた組み合わせを試します。
先ほどと同じSemillaですが、今度は黒(31・black)です。どうなると思いますか?

これは… 私は、ものすごく好きです!! ↓

黒と合わせてもモヘアの存在感はすごかった! 後ろに隠れるどころか、こんな色もいたのね、という色があちこちに顔を出し、ずっと見ていても見飽きない編み地になりました。藤城清治の影絵のように幻想的。
この10cm四方の編み地を見ているだけでこんなに嬉しい気持ちになれるとは、幸せなことです。


引き揃えの目的として、太さの調節のためなら似ている糸を合わせることが多いかと思いますが、想像の範囲は超えず、特に面白いことは起きないでしょう。
もし、わくわくしてみたかったら、ぜひ、色、素材、太さなど差が大きい糸同士を思い切って合わせてみてください。試してみて、自分でも思いがけない美しさに出会うのが、引き揃えの楽しさだと思うのです。


色々実験してみましたが、これはほんの一例です。気になる糸を手に入れたら、ぜひ素敵な組み合わせを発見してくださいね。